相続の大まかな流れは以下のとおりとなります

相続の流れは以下の通りとなります。

 被相続人の死亡(相続の開始)
 葬儀社の手配など葬儀の準備 ●関係者への連絡・葬儀の準備
●7日以内に死亡診断書を添付のうえ、市区町村役場へ提出
●葬儀費用の領収書等の整理・保管
7日以内
 死亡届の提出
 お通夜
 葬儀
 初七日
●生命保険の請求
 遺言書の有無の確認 ● 遺言書があれば、家庭裁判所へ提出して検認の手続き
●ただし、公正証書による遺言書の場合、検認手続きは不要
3カ月以内
 代理人の選定 ●相続人の中に未成年者がいる場合、特別代理人選任の手続き(家庭裁判所)
●相続人の中に行方不明者がいる場合、不在者財産管理人選任の手続き(家庭裁判所)
 相続財産調査の開始 ●有価証券や不動産等の評価額も算出し、財産目録を作成
●金融機関・証券会社等へ残高証明書発行依頼
●相続財産(負債を含む)の概要を各相続人が把握し、相続するか放棄をするかの検討
 相続放棄・限定承認 ●相続放棄・限定承認の手続きは、原則として3カ月以内が期限(家庭裁判所)
●限定承認は、相続人全員で行うことが必要
 法定相続人の調査・確定 ●被相続人と相続人の戸籍謄本を取得して、法定相続人を確定
 所得税の順確定申告・納税 ●被相続人の死亡までの所得を確認して相続人が連署で所得税の申告を行います  4カ月以内
 相続財産の調査・評価 ●正確な評価をするには、専門家(税理士等)のアドバイスも 10カ月以内
 遺産分割協議・遺産分割協議書作成 ●相続人全員で遺産分割について合意形成
●相続人全員の印鑑証明書の取得
●遺産分割協議書の作成と相続人全員の署名・押印
 相続税の申告・納付 ●専門家(税理士等)に相談し、各相続人の相続税額計算と控除・特例適用の検討
●納税資金の準備と納付方法の検討
●被相続人の死亡時の住所地を管轄する税務署に申告・納税
 遺留分減殺請求の期限  1年以内
 配偶者の相続税軽減の手続き期限  3年以内
 相続財産の名義変更手続き ●不動産の相続登記、自動車の名義変更手続き、預貯金・有価証券の名義書換・払戻手続き
 相続手続き完了

遺産分割の方法

相続が発生すると、相続財産はいったん、相続人全員の共有の財産となります。この遺産を相続人全員で話し合いをして具体的に相続人にうちの誰が何を相続するのかを協議することを遺産分割協議といいます。
遺産分割の方法としては、以下のようなものがあります。

(1)現物分割

不動産は○○に、預貯金は△△にといった具合に相続財産の種類ごとに相続人を決める分割方法です。遺産分割は現物分割を基本とします。

(2)換価分割

遺産を売却して換金し、その金銭を相続人で分割する方法です。不動産・株券等の現物に比べ相続後の価格変動はありません。
また法定相続分どおり分割可能ですので、遺産のうち特定の不動産のみ換価分割をされるケースもあります。一方、居住用・営業用資産は換価できないという側面をもちます。

(3)代償分割

○○は不動産全部を相続するが、△△に1000万円支払う。という具合に他の相続人への債務を負う方法です。
農家では農地の細分化防止の目的でこの方法が多用されますが、債務を負った相続人の資力が問題となります。

(4)共有分割

一つの遺産を2人以上の相続人が共有持分によって所有する分割方法。将来的に共有の遺産を売却するなど共有財産を処分する際に、共有という不安定な権利関係からトラブルに発展するケースもわずかですが存在します。

遺産分割協議の注意事項

被相続人に負債がある場合

債務についての分割協議結果は対内的(相続人同士の間では)には有効ですが、対外的には効力がありません。
つまり負債を誰か特定の相続人に全部相続させることで合意した場合でも、債権者に対しては効力がないということです。
債権者は全ての相続人に対し、返済を請求することができます。
負債を全部引き受けた相続人が自己破産してしまえば、債権者は大変な不利益を被ってしまうので、単純承認した以上、債務は返済しなければなりません。

相続人のうちに、未成年者や被後見人、行方不明者がいる場合

遺産分割協議は、相続人全員の合意が必要です。一人でも欠いた分割協議は無効です。
また、相続に無関係の人間が参加した協議も無効です。
あなたの配偶者が亡くなり、貴方と未成年のお子さまが相続人になった場合は、あなたとあなたのお子さまとの利益が相反しますので、あなたのお子さまのために特別代理人を選任して遺産分割協議を行わなくてはなりません。
特別代理人の選任にはは、家庭裁判所への申立てが必要です。

あなたの父親がなくなり、あなたの母親の成年後見人にあなたがなっている場合
このような場合も、あなたとあなたの母親の利益は相反します。未成年者が相続人である場合と同じく、家庭裁判所へ申し立てをして特別代理人の選任が必要となります。
相続人に行方不明者がいるような場合も、同じく行方不明の代理人を立てなければなりません。
しかし遺産分割協議に代理人が参加し、後に行方不明者は死亡していたことが判明したときは。その時点で相続人ではない者が参加していたことになるので無効となります。

また、相続人の一人が重要な財産を隠匿した場合
財産評価方法が明らかに正当ではなかった場合
無効になることがあります。

原則として、分割協議のやり直し(再協議)はできません

相続人が欠けるなど上記のような理由で分割協議が無効の場合は、当然に再分割協議はできますが、有効な分割協議で合意した内容は後日、不服があったとしても基本的には再分割協議はできません。
以下の事例では、分割協議のやり直しをすることはできませんので、注意が必要です。

自分の相続分だけが、価格変動で下落した
あの時は相続税が安くなる方法で分割しただけだ
印鑑は押したが納得して押したわけではなかった。

遺産分割協議がまとまりにくい例

子供がなく相続人が配偶者と被相続人の兄弟姉妹
先妻の子や認知した子が相続人の中にいる
配偶者が代理人となり参加する
特別受益者や寄与分を主張する相続人がいる
遺産は不動産だけで預貯金が少ない
自筆証書遺言がある
行方不明者や海外居住者がいる
進行役的存在がいない
相続人間での貧富の差が大きい
相続が開始してから相当の年月が経過し、相続人が死亡している

以上のような場合、遺産分割協議は非常にまとまりにくいので、今のうちにあなたの希望を推定相続人全員と話し合い、遺言書を作成することも肝要になってきます。

遺産分割協議書の様式分割協議書の様式は特にありません。手書きでもワープロでも構いませんし用紙の大きさも自由です。

最低限記載すべき内容
被相続人の氏名・本籍・死亡年月日
各相続人が相続する財産を相続人ごとに記載
その他協議で決めたこと
祭祀承継者
新たな財産が発見された場合の相続方法
相続人全員の住所・氏名・押印(実印)

相続財産は不動産の場合、登記簿のとおり正確に記載(A4縦であればアラビア数字可)し、共有の場合は持ち分割合を、預貯金の場合は銀行名・口座番号・相続額を記載します。
遺産分割協議書は通常、相続人の数だけ作成し各自1通づつ保管します。

相続放棄

相続の開始を知ったときから原則3カ月以内の手続きが必要です。その期間内に家庭裁判所での手続きを行わなければ相続したものと看做されます。
被相続人のプラスの財産も負債もいっさいを放棄し、すべての財産を相続しないという手続きです。
3カ月を経過した後でも、相続放棄ができる場合がございまので、その場合でも一度、ご相談下さい

相続財産の処分には要注意

後から相続人が被相続人の借金の存在を知った場合であったとしても、いったん相続財産の全部または一部を処分すれば単純承認したとみなされます。もし借金があるのであれば、必ずその明細は相続人にわかるように残す必要がありますし、相続人も相続財産に関する調査は慎重に行う必要があります。

連帯保証人になっていた場合も忘れずに

連帯保証人になっていた場合も、連帯保証人の地位は相続されます。この事は忘れやすいですし、債務者本人が払っていくから大丈夫だろうと考えるのは危険です。何かに明細を残しておくようにしましょう。

相続放棄の取り消し

相続放棄の取り消しは原則、認められません。例外は、詐欺や脅迫による場合です。あとになって相続放棄を取り消すことはできません。プラス財産が多い可能性がある場合は、限定承認が無難です。
限定承認の手続き相続財産が正の相続財産と負の相続財産があり、どちらが多いか不明な場合は、限定承認をお勧めします。ただし限定承認は相続人全員合意の下で行わなければならず、だれか一人だけ単純承認するということはできません。
また限定承認した後は、5日以内に全ての債権者に対し限定承認した旨の公告をし、 2ヶ月以上の期間を定めて債権請求を申し出るように催告しなければなりません。
限定承認は、相続の放棄と同様に3ヶ月以内に家庭裁判所に申し立てる必要があります。
(限定承認の申述審判申立書・財産目録を提出)
財産調査や相続人の協議に時間がかかる場合、家庭裁判所に請求すれば、延長してもらえます。

家庭裁判所による遺産の分割

相続人間で遺産分割の協議が調わないとき又は協議をすることができないときは、家庭裁判所に請求して調停分割又は審判分割をすることになります。
家庭裁判所による分割には、調停分割 と 審判分割があり、いずれを申立てても構いません。また、審判を申し立てた場合であっても、家庭裁判所は、職権で調停に付すことができるとされています。

調停分割

調停の申立ては、相手方の住所地(複数いる場合は誰かの住所地)の家庭裁判所又は当事者の合意で定めた家庭裁判所に申立てます。
調停分割の手続は、家事審判官1名と調停委員2名で組織される調停委員会が当事者の意見を聞きながらすすめていきます。実質的には調停機関の関与する協議分割といえます。
なお、申立ては、相続人(包括受遺者を含む)の内1人又は複数から行い、また、申立人以外のすべての相続人(包括受遺者を含む)を相手方とする必要があります。

申立てに必要な書類
申立書1通
被相続人の除籍謄本,改製原戸籍謄本
相続人が配偶者・子・親の場合
被相続人の出生時(被相続人の親の除籍謄本又は改製原戸籍謄本等)から死亡に至るまでの継続した全戸籍謄本(a)
相続人が(配偶者と)兄弟姉妹の場合
被相続人の父母の出生時(被相続人の父方祖父母及び母方祖父母の除籍謄本又は改製原戸籍謄本)から被相続人の死亡時に至るまでの継続した全戸籍謄本(b)
相続人のうちに子又は兄弟姉妹の代襲者が含まれる場合
上記a及びbのほかに,代襲者と本来の相続人との続柄を示す戸籍が必要
上記のほかに,さらに戸籍謄本が必要な場合もあります。
相続人全員の戸籍謄本,住民票
遺産に関する書類
遺産目録
不動産登記簿謄本
固定資産評価証明書

調停で合意できたとき
何回かの調停期日において話合いの結果、当事者全員で合意ができたときには、これを裁判所書記官が調書に記載します。そしてそのときに調停が成立し、この調停調書は確定した審判と同一の効力が生じ、手続は終了します。

調停で合意ができなかったとき
調停が不成立となった場合には、審判の申立てがあったものとみなされ、当然に審判手続に移行しますので、あらためて家庭裁判所に審判の申立書を提出する必要はありません。
なお、最初から審判の申立をし、その後調停に付されたものであっても、調停が不成立となった場合再び審判手続きが開始されることになります。

調停の取り下げ
調停の申立は、いつでも自由に取り下げができ、取り下げがあると調停は終了します。

審判分割

遺産分割の審判の申立先は、調停と違って、相続開始地すなわち被相続人の最後の住所地の家庭裁判所の管轄とされています。
ただし、調停の不成立によって審判に移行する場合は、通常、調停をしていた家庭裁判所が審判手続きを受けています。
審判による分割も非公開の手続でなされますが、調停とちがって、話合いではなく、家事審判官が職権で事実の調査および証拠調べ行い当事者の希望なども考慮のうえで、分割の審判が下されます。
なお、審判の内容に不服がある場合には、2週間以内であれば、即時抗告の申立てができ高等裁判所で争うことができます。
家庭裁判所の調停又は審判に基づいて遺産分割が決定し相続登記や預貯金の名義変更等を行う場合には、調停調書又は審判書(この場合は確定証明書付き)の謄本を添付して行うことになります。なお、名義変更の手続には、すでに家庭裁判所において相続関係を審査した上で行われることから、戸籍謄本等については添付を要しないものとされています。