会社法施行後(平成18年5月1日以降)は、会社の種類が大きく2つに大別され、所有(=会社に対する出資)と経営が分離されている「株式会社」と所有(=出資)と経営の分離がされていない「持分会社」に分類され、「持分会社」には「合名会社」「合資会社」「合同会社」の3形態に整理されました。持分会社の「持分」とは、社員(ここでいう「社員」とは、いわゆる従業員ではなく、会社に対して出資した者のこと)の地位のことを差し、社員は会社に対し種々の権利を持ち義務を負っています。
ちなみに、持分会社の種類と責任の違いは、以下のとおりです。
「合名会社」=無限責任社員1名以上必要
「合資会社」=無限責任社員1名以上と有限責任社員1名以上必要
「合同会社」=有限責任社員1名以上必要
有限責任社員のみで構成される「合同会社」の設立は、近年増えつつある印象ですが、「合資会社」「合名会社」を新たに設立される、といったことは最近ではほとんど無いのが実情です。
今回は、最近ではあまり聞かれなくなりました、「合資会社」の社員の方に相続が発生したお客様からのご相談でした。
一口に「社員の相続」といっても「合資会社」の場合は、社員の責任の区分(無限責任社員なのか、有限責任社員なのか)と、相続発生の時期(社員の死亡年月日)がいつなのか、定款の記載内容はどうなっているのか、によって具体的な相続手続きが大きく異なることがポイントです。
社員の死亡年月日が、会社法施日(平成18年5月1日)より前であれば、旧商法の規定が適用され、無限責任社員の死亡は法定退社原因となり、その相続人が死亡した無限責任社員の地位を承継して合資会社に入社することは認められてはおらず(ただし、死亡した無限責任社員の地位を相続人が承継して入社することができる旨を定款で定めることは可能でした)、無限責任社員の地位の相続はできませんでした。これに対して有限責任社員の死亡の場合は、定款規定の有無によらず、法律上当然に、その相続人全員が同じく有限責任社員として入社することになります。
社員の死亡年月日が、会社法施行後(平成18年5月1日以降)は、無限責任社員・有限責任社員の区別なく、社員の死亡は法定退社事由とされ、死亡した社員の相続人がその地位を承継することはできないこととされ、定款に「社員死亡の場合は相続人がその地位を承継する」旨の規定がある場合に限り、相続人が社員の地位を承継して入社できることとなりました。
今回のケースは、会社法施行後の有限責任社員の死亡で、「社員死亡の場合は、相続人がその地位を承継する」旨の定款規定がありましたので、一旦、亡くなられた有限責任社員の共同相続人全員(配偶者の方と、御子様方3名様)が有限責任社員として入社した旨の登記をして、ご長男以外の相続人(配偶者の方と、御子様方2名様)については、相続された持分をご長男に譲渡して退社した旨の登記をする、ということで手続き(結論としては、お父様の有限責任社員としての地位をご長男お1人が相続された)を進めさせて戴きました。
ちなみに、「合資会社」の唯一の有限責任社員が亡くなられて、相続人が有限責任社員の地位を承継して入社せずに、有限責任社員が0人となってしまった場合には、「合資会社」は、「合名会社」に種類変更することが必要となります。