「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」の一部が施行されたことにより、平成30年11月15日から、次の要件を満たす土地について相続による所有権の移転の登記を受ける場合において、登録免許税が課されないこととなっています。
1.市街化区域外の土地であること
2.法務大臣が指定する土地であること
3.不動産の価格が10万円以下であること
2.の「法務大臣が指定する土地」については、法務局・地方法務局のホームページに掲載されていますし、各法務局・地方法務局の担当部署で確認することもできるようです。
今回、相続の手続きについてご依頼を受けた方の土地は、まさに上の要件を満たす土地のため、登記申請手続きをさせて戴くにあたり、登録免許税額はゼロ円で行うことができました。
ただし、相続登記(名義書換)手続きのための登録免許税は免税(ゼロ円)だとしても、登記簿謄本(全部事項証明書)を取得するためには、1通600円が必要(オンラインでの窓口交付申請の場合、1通480円)です。今回、お客様が相続された土地は40筆以上もあり、相続登記のための登録免許税は免税でしたが、登記簿謄本(全部自己証明書)を取得されるにあたっては、1通600円×40筆=24,000円もかかってしまったとのことでした。少々費用の安い「要約書」を法務局で取得(1通450円)することも、インターネットで登記情報を取得する(1通335円)こともできますが、いずれにしてもそれなりの費用が必要となってしまいますよね。。。
通常であれば、お客様に対しては登記が完了した後の登記簿謄本(全部事項証明書)を取得してお渡しするのですが、今回のお客様については、登記完了後の登記簿謄本はお渡ししないことでご了承を得ることと致しました。登記簿取得に費用がかかってしまっては、せっかくの免税効果も半減ですしね。法務局からは、権利証(=「登記識別情報通知」)も「登記完了証」も発行されますので、お客様ご自身も「事後確認のための登記簿謄本は要りません」とのことでした。
「所有者不明土地の利用の円滑化等に関する特別措置法」は、所有者が不明な土地について、一定の条件下において国や自治体などが最長10年間の「利用権」を設定することができ、公園や仮設道路、文化施設などの公益目的に限って利用することを可能とする制度ですが、このような法律を制定しなければならない日本の今の現実は、極めて深刻な事態のように思われます。
報道でも、「所有者不明」とされている土地の面積は、九州本土(367.5万ヘクタール)を大きく上回る面積(約410万ヘクタール)を占めると推計されると言われています。驚くほどの土地の所有者がわからないという状況にあるうえに、人口の減少や少子化・高齢化により所有者不明土地はさらに増えるとの指摘もなされています。
「一定の要件を満たす土地の相続登記は登録免許税が免税(ゼロ円)」も、今後、相続登記が放置されるおそれのある土地に対応するための措置のようです。所有者不明土地がこれ以上増えないために、効果があることを望みます。