相続放棄しても受け取れる保険金

相続放棄とは、「相続人の意思によって、一応生じた相続の効果を全面的に拒絶する行為」をいいます。被相続人(亡くなられた方)の一切の財産(プラス、マイナスを問いません)を相続しません、ということです。相続放棄をすると、その人は最初から相続人とならなかったとみなされます。相続放棄は、相続人が「相続を放棄します」という意思表示をするだけで効果が発生するのではなく、家庭裁判所に必要書類を提出したうえで、それが受理されて初めて認められます。

今回のご依頼は、亡くなられたお父様の相続についての手続きでした。相続人は、お母様と長男・次男の3名様。長男には「お父様の遺産は一切受け取りたくない」という強いご意思がおありで、私が具体的な遺産の内容をお聞きする前に、既に家庭裁判所においての「相続放棄申述」の手続きがお済みでした。そこで、手続きとしては長男から「相続放棄申述」の事件番号をお聞きしたうえで、相続放棄の証明書を家庭裁判所から郵送して貰い、お母さまと次男のお二方で遺産分割協議を調えて戴いて進めていきました。

遺産相続の手続きを進めていると、亡くなられたお父様は、ご家族の把握していない保険契約をいくつかされてた事実が判明しました。これらのうち、医療保険の入院給付金等、受取人が亡くなられた人自身となっているものについては、保険金は「相続財産」としてお母さまと次男お二方の遺産分割の対象となりましたが、「受取人の指定がされていない生命保険金」については、約款上「受取人(=法定相続人)固有の財産」と定められていたため、相続放棄をされた長男にも受取る権利があり、再度手続きにご協力を得る必要がありました。長男としては「もう父親のことで、二度と関わりたくない」との強い拒否反応を示されていましたが、最終的にはご協力を得ることが叶い、お父様の生命保険金は相続人のもとに支払われることとなりました。

なぜ相続放棄をしても生命保険金が受け取れるのかについてですが、生命保険金が民法上の「相続財産」ではなく、生命保険契約に基づいて受取人が保険会社から受け取る「受取人固有の財産」であるからです。受取人がご契約者(=亡くなられた人)ご自身である場合や、契約者に対する解約返戻金などの場合は、この限りではありませんが、受取人に指定されている方が相続放棄をされたとしても、保険金を受け取る権利に影響を及ぼすことはありません。


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