兄弟姉妹が相続人。再代襲相続は認められるの?

中部圏にお住まいのYさん・A美さんご夫妻は、結婚当初よりA美さんの伯父・Tさんの近所に暮らしていました。Tさんは4人兄弟の長兄であり、その下に弟が2人と末っ子の妹(=A美さんのお母さん)がいましたが、2人の弟と、A美さんのお母さんは既に他界していました。独身を貫いてきたTさんにとって、A美さんは実の娘のような存在であり、YさんもYさんの息子さんもTさんとは家族ぐるみの付き合いをしてきました。Yさん・A美さんの息子さんもTさんのことを自然に「おじいちゃん」と呼んで慕ってきました。

Tさんが年老いて介護が必要になってからは、病弱なA美さんに代わってYさんが主体的にTさんの介護を続けてきました。デイサービスの手配や手すり設置等Tさん宅のリフォーム、Tさんの手術・入院時の手続き等も、すべてYさんがTさんのお世話をしてきました。Tさんの亡くなった弟2人には、各々2人ずつお子さんがいましたが、2人の弟は関東圏で世帯を持ったこともあり、こちらの甥・姪たちとTさんとは、面識がないに等しいほど交流がありませんでした。

献身的にTさんの介護を続けるYさんの毎日でしたが、ある日、A美さんが突然の事故でお亡くなりになりました。その頃のTさんは、脳こうそくで幾度か倒れたこともあり、意識もなく寝たきりの状態でした。それでもYさんは、Tさんが天寿を全うするまでTさんのお世話を続けました。

Tさんの葬儀には、A美さん以外の関東圏に住む甥・姪たち4人は参列しませんでした。しかし、この4人の甥・姪たちがTさんの相続人となるのです。Yさんも、Yさんの息子さんも、Tさんの法定相続人ではないので、Tさんが生前に何らかの処置を施さない限り、Tさんの財産について当然に相続する権利があるわけではないのです。

被相続人に子も直系尊属もいない場合には、兄弟姉妹が相続人となります。この場合に、被相続人が亡くなった時点で、その相続人となるはずの兄弟姉妹が死亡している場合には、その兄弟姉妹の直系卑属である子が代襲相続することになります。
ただし、Yさんのケースでは、Tさんの妹(=A美さんのお母さん)が死亡しているため、代襲相続するはずであった亡き妹の子であるA美さんまでもが、Tさんより先に亡くなっています。この場合に、A美さん(代襲相続人)の直系卑属であるA美さんの息子さんが再代襲相続できるのかどうかが問題となります。

かつては、民法に兄弟姉妹が相続人となる場合であっても再代襲相続されるという規定がありましたが、昭和55年の改正によって、民法からその規定は削除されました。そのため、昭和56年1月1日以降に開始した相続については、兄弟姉妹が相続人となる場合の再代襲相続は認められないことになります。

現在の法律では、YさんもYさんの息子さんもTさんの相続人ではないため、ご自宅を含め、Tさんの財産は、Tさんとは生前の交流がほとんど無かったTさんの甥・姪たち4人が相続することになりました。しかし、それが、本当にTさんの意志に適ったことであったかどうかは分かりません。Tさんは遺言書を遺していなかったため、Tさんがご自身の財産をどうされたかったのかは、誰にも知ることができないままなのです。

具体的な相続の場面では、一人合点で終わらせずに、必ず専門家のアドバイスを受けられることをお勧めします。


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